僕のクラスメイト

僕はとある学校に転校した。
親父が転勤族であったために、どこか1箇所に留まることがなかった。しかし、親父が転勤をしなくなり、一軒家で暮らすことになった。
正直不安で仕方なかった。みんなの身内感、それにより苛まれる僕の孤独感。どう振舞ったらいいのか分からなかった。
そんな時に会ったのがKだった。
出来上がった集団の中に入るのが苦手な僕の為に、Kはさりげなくサポートをした。グループ分けの時に上手く入れるようにしてくれたり、あるいは孤立する僕に話の先を向けてくれたり。
Kの凄いところは、そういった気遣いを気遣いに見せないところにあった。本当はKが促してくれているだけなのに、クラスメイトは自発的に僕を誘ったり、僕に話しかけたかのように錯覚する。
Kはクラスの中心に居ながら、その全員を等しく大切にしていた。思い返せば、Kの役割は一介の小学生ではなく、先生か何かに近い。クラスにはKの他にも、仕切り役の女の子であるHさんや、ガキ大将タイプのNが居たけれど、Kの役割はもっと独特なものだった。基本的にKはみんなと等しく仲が良かった。
Kはみんなを愛していたし、みんなもKを愛していた。彼女はいつだって好意の膜に巻かれていた。陽だまりの中で彼女が微笑む度に、教室内の空気が調整される。Kはクラスのサーキュレーターだった。
Kはみんなを愛していたし、みんなはKを愛していた。

 

例えばうちのクラスでは多数決で決めるということが一度もなかった。
そう、一度もだ。
みんなクラスの34人の生徒が綺麗に定員通りに別れた。別にみんな主体性がなく、盲目であった訳では無い。
完璧に統率が取れていた。合唱祭の曲も、一切対抗案など出なかった。みんなが諸手を挙げて決まったのだ。